将来の年金額は?免除期間の老齢基礎年金の給付額について
国民年金保険料の免除申請をするメリットについては前回お話をしました。
今回は、国民年金保険料の免除が承認された期間は将来いくらの年金額になるのかみていきたいと思います。
国民年金保険料の多段階免除制度とは?
国民年金保険料の免除区分は以下4つに分けられています。
・全額免除・3/4免除・半額免除・1/4免除
免除に関わる承認所得とは?
国民年金の免除申請には「承認基準=所得の基準」というものがあり、申請者本人の前年所得が以下に記す金額の範囲内であることが条件となります。この所得の基準には、本人のほか、世帯主や配偶者についても所得審査があり、その所得に応じて免除区分(免除割合)が決定されます。ただし、納付猶予については、本人と配偶者のみ所得の審査があり、世帯主は所得審査の対象とされていません。
☞保険料免除・納付猶予の承認基準:前年所得が以下の金額の範囲内であれば承認される
- 全額免除
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 以下の所得 - 4分の3免除
78万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 以下の所得 - 半額免除
118万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 以下の所得 - 4分の1免除
158万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 以下の所得 - 納付猶予制度
(扶養親族等の数+1)×35万円+22万円 以下の所得
免除期間の年金額はいくらになるの?
いろいろと審査の基準や区分は分かったけど、免除申請が承認された期間の年金額は将来いくらになるのでしょうか。
20歳から60歳までの40年間(480ヵ月)すべての期間、保険料を全額納めた場合、もらえる年金額は781,700円です(令和2年度価格)。よって、ひと月分あたりのリターンは、
781,700円÷480ヵ月=1,629円 となります。
毎月、国民年金保険料16,540円(令和2年度価格)を納めれば、将来1629円で返ってくるということが言えます。計算上は、40年間きちんと保険料を納めると、1,629円×480ヵ月分=781,700円となり、満額の年金がもらえるということになります。
免除期間における年金額は、1/3または1/2の国庫負担分に納付した保険料の割合分を加算した金額となります。ちなみに、平成21年3月以前は1/3の国庫負担でしたが、平成21年4月以降は1/2の国庫負担となり、その割合は変更されています。
簡潔にまとめると、「免除区分(免除割合)によって国庫負担による給付割合(免除期間における年金の給付額)は決まっている。」ということが言えるのです。
実際、平成21年4月以降で免除期間にかかる老齢基礎年金の給付額を見てみましょう。
全額免除が通った場合、本人は保険料を納めなくてもよい代わりに、国も半分しか面倒をみてくれません。(給付割合=1/2)
しかし逆の発想をすると、保険料を納めずとも、国は将来半分の年金額を負担してくれるということが言えます。この考え方をベースに他の免除区分における老齢基礎年金の給付額を見てみましょう。
【1か月だけ免除期間がある場合の当該期間にかかる老齢基礎年金の給付額】(令和2年度価格にて試算)
- 国民年金保険料16,540円が全額免除→1,629円×1/2(給付割合)=814円が将来の年金額として支給される。
- 国民年金保険料16,540円のうち3/4免除→1629円×5/8(給付割合)=1018円が将来の年金額として支給される。
- 国民年金保険料16,540円のうち半額免除→1629円×6/8(給付割合)1221円が将来の年金額として支給される。
- 国民年金保険料16,540円のうち1/4免除→1629円×7/8(給付割合)=1425円が将来の年金額として支給される。
いかがでしょうか。なんとなく、4つの免除区分における年金額がいくらになるのかわかってきたでしょうか。
ご自身に免除期間があり、ざっくりと計算してみて、将来の老齢基礎年金の額が低くなると思われた方は、10年以内であれば追納という制度を利用して免除された保険料を納めることができます。免除された保険料を納めれば、その期間は全額保険料納付済みとなり、一人前の年金として将来支給されます。
今回は、国民年金保険料の多段免除制度と免除期間における老齢基礎年金の給付額についてみてきました。
ご自身の将来受け取る年金額がいくらになるのかわかると、気持ちがスッキリしますね。ざっくりでも年金額を知った上で、足りない部分をどうするか考えていくことは、ご自身の老後を安心して暮らしていくためのベースとなります。
ちょっとしたことを理解して、前向きに年金を考えていただくきっかけになればと思います。次回は、離婚時年金分割について詳しくみていきたいと思います!
日本年金機構ホームページ ・国民年金保険料の免除制度・納付猶予制度 ・知っていますか?保険料の免除制度パンフレット2020年4月1日 ・国民年金保険料の追納をおすすめしますパンフレット2020年4月1日 ・国民年金保険料の追納制度