パート主婦の働き方改革~いったいどう働けばいいのよ編~その③

今回も前回に引き続き、短時間労働者として働く主な女性パートの方の働き方について深堀してお話を進めたいと思います。

国が提唱する短時間労働者の社会保険適用拡大のメリットについて

短時間労働者への社会保険適用拡について、「国の視点(思惑)と実際の家計単位の視点(希望)にズレがあることは否めない。」というお話を前回しました。一体、なにがどうズレているのか、まずは、国が提唱する短時間労働者の社会保険適用拡大のメリットについてみてみたと思います。

国が提唱する短時間労働者の社会保険適用拡大のメリット3本柱

・お勤務先の社会保険に加入することで口座振替で引き落としていた国民年金保険料・国民健康保険料が厚生年金保険料・健康保険料に変わり給与天引きに。

・厚生年金保険料・健康保険料は労使折半で保険料は半分会社負担。

・配偶者の扶養基準130万円を意識せずに働くことができ、厚生年金保険料・健康保険料に加入により、将来の保障も充実。

従業員数が100人以下の会社で働いている(主に女性パートの方で夫の扶養範囲内で働いている)方が、年収130万円以上になると、社会保険の扶養を外れてしまいます。しかしながら、お勤め先の労働時間が週30時間以上ないと厚生年金には入れず、結果、ご自身で国民年金や国民健康保険に加入することとなり、実質、保険料負担だけが重しとなって発生することになります。

今回の短時間労働者の社会保険適用拡大により、月額8.8万円の方がお勤め先の社会保険に加入した場合、ご自身で払う保険料負担額は12,500円/月(厚生年金保険料月額8,100円+健康保険料月額4,400円)、そして会社も同額の12,500円/月を負担してくれるので、ご自身で国民年金保険料・国民健康保険料を払う場合より1万円ほど保険料を低く抑えられます(年収130万円の方がご自身で国民年金保険料・国民健康保険料を払う場合の本人負担額は22,500円/月)。

また、年収106万円(月額8.8万円)のアルバイト・パートの方が、短時間労働者の社会保険適用拡大により、お勤め先の社会保険に加入することになった場合も、ご自身で払う保険料負担額は12,500円/月、そして会社も同額の12,500円/月を負担してくれるので、ご自身が国民年金保険料・国民健康保険料を払う場合と比べて6,600円ほど保険料を低く抑えることができるようになります(年収106万円の方がご自身で国民年金保険料・国民健康保険料を払う場合の本人負担額は19,100円/月)。

 

適用拡大による個人の受益と負担について

先にみた「短時間労働者の社会保険適用拡大のメリット」から考えると、「短時間労働者の適用拡大でパートタイマーでも厚生年金に加入した方がお得なんじゃないか。」と感じられる方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。検証してみましょう。今度は、お勤め先の社会保険に加入して継続勤務した場合、将来受け取れる年金額は一体いくら増えるのか考えたいと思います。

お勤め先の社会保険に加入し、厚生年金被保険者になると、将来65歳から支給される老齢年金は、老齢基礎年金に加えて、”老齢厚生年金”が上乗せされて支給されます。1階の土台部分である、老齢基礎年金は最大40年間加入すると、年額780,900円の年金額が一生涯にわたり支給されます(令和4年度年金額)。一方で、老齢基礎年金に上乗せされる2階部分に相当する老齢厚生年金は、給料によって保険料が決まります。高い給料をもらっている方は、その分、給与から天引きになる保険料も高く、将来65歳から支給される老齢厚生年金(報酬比例部分の年金額)も高くなります。

 

月額8.8万円の方が1年間厚生年金に加入するといくら年金が増えるの?

ここからようやく本題には入りますが、主に家計を支える女性パートの方が、賃金月額8.8万円でお勤め先の社会保険に1年間加入した場合、増える老齢厚生年金(報酬比例部分の年金額)は月額450円です。年金は”年”金という文字どおりの年額になおすと、450円/月×12か月=5,400円年金が増える計算になります。賃金月額8.8万円(年収106万円)を超えると、会社が労使折半で保険料12,500円/月を負担してくれますが、同じくご自身の給与から年間約15万円の保険料(12,500円/月×12か月=15万円/年)が天引きされるので、その分手取りが減ることになります。これが今もいわゆる「106万円の壁」といわれている所以(ゆえん)です。

これと似たように「103万円の壁」という言葉もよく聞かれますが、103万円を超えると、ご本人に所得税がかかってきますが、年収が104万円になっても所得税は500円ほど増えるのみで、大きな負担額ではありません。月額8.8万の給与水準でも税率は低くいため、それほど心配することではないと思われます。

 

【これは知っとこ!】賃金月額8.8万円(年収106万円)の方が短時間労働者による社会保険加入となったら…

・年間15万円の保険料が給与から天引き
・手どりは約91万円
・増える年金額は年額5,400円

言い方を換えれば、「月に12,500円の保険料が給与から天引きになるけど、将来65歳からもらえる年金は450円増えますよ。」というお話です。

「人生は長生きリスクだ。」をいう言い方をする方もおられます。人生100年時代の長生きリスクをとって、少しでも年金額が増える選択肢ができたことは、それはそれでよいことだと思われます。しかし、一方で家の事の多くを担う女性パートの方からは、「労働時間が増えたからといって、家事労働という偏りが家庭内で解消されるわけでもない。」という声が聞かれます。

 

一億総活躍社会が叫ばれるなか、女性は駆り出されるのか、それもとも輝けるのか…?次回は、「短時間労働者の働き方と労働時間」「主婦にも家事労働における休憩という名のインターバルを!」「老齢厚生年金は先充てされて遺族厚生年金の年金額を超えることはないという現実問題」などに触れながらお話を進めていきたいと思います。

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