パート主婦に激震!短時間労働者の社会保険適用拡大にまつわるQ&A ~ここがよくわからんのよ編~その②
前回に引き続き、今回はパートタイムで働いている方やダブルワークをされている方からのご質問を取り上げてみます。
Q:月額賃金が8.8万円以上という要件のほかに、年収が106万円以上あるかどうかも今回の短時間労働者の社会保険加入の要件になるのでしょうか。よく、「106万円の壁」と言われていますが、年収が106万円以上超えると社会保険に加入することになるということでしょか。
A:短時間労働者の社会保険への適用は、月額8.8万円以上であるか否かのみによって要件を満たすか否かを判定します。年収106万円はあくまでも参考値(106万円を12か月で割ると、8万8333…円)です。
Q:健康保険の被扶養者として認定される要件として、年収が130万円未満であることが収入要件としてありますが、この健康保険の被扶養認定要件に変更はないのでしょうか。月額8.8万円以上の賃金であっても、年収が130万円未満であれば扶養から外れることはないのでしょうか。
A:健康保険の被扶養者認定の収入要件に変更はありません。ただし、年収が130万円未満であっても、短時間労働者の社会保険適用要件を全て満たす場合、もしくは4分の3基準を満たす労働者となった場合は、年収130万円未満であることにかかわらず、健康保険の扶養から外れて、お勤め先の厚生年金保険・健康保険の被保険者となります。具体的には、夫の扶養に入っている妻が年収130万円未満であっても、パート先で短時間労働者として社会保険の適用拡大の要件を満たせば、パート先の社会保険へ加入することになり、事実上、国民年金第3号被保険者から厚生年金第2号被保険者となります。
Q:短時間労働者の社会保険適用要件をもう一度教えてもらえますか。
A: おさらいしてみましょう。年金法改正により令和4年10月から短時間労働者の社会保険加入要件は次のとおりになりました。
● 企業規模要件→常時100人超
● 賃金要件→月額8.8万円以上
● 学生要件→原則学生は対象外
● 労働時間要件→週の所定労働時間が20時間以上
● 勤務時間要件→継続して2か月を超えて使用される見込み
上記すべての要件に当てはまるパートタイマー・アルバイトの方、いわゆる短時間労働者の方は、社会保険の強制適用となります。
Q:アルバイトを2つ掛け持ちしています。今回の法律改正で、短時間労働者が社会保険加入”する” or ”しない”は、それぞれのアルバイト先の雇用契約内容(賃金、労働時間、労働日数など)を合算して加入する、しないを判断するのでしょうか。
A:同時に2か所以上の事業所で勤務(いわゆるダブルワーク)している方が、被保険者資格の取得要件を満たすかどうかについては、それぞれの事業所単位で判断することとされており、2か所以上のお勤め先の月額賃金や労働時間を合算することはありません。
Q:2か所以上の会社で同時に勤務しています。複数の勤め先で、今回の短時間労働者の被保険者資格の取得要件を満たした場合は、どの勤務先で社会保険に入ることになるのでしょうか。
A:同時に2か所以上の事業所で被保険者資格を満たした場合は、いずれか1つの事業所を選択して、その事業所が所在する管轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」を提出します。なお、健康保険の保険者が2つ以上あり、健康保険組合を選択する場合は、年金事務所のほか、選択する健康保険組合にも「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択/二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。
日本年金機構HP:被保険者が複数の
適用事業所に使用されることになっ
たとき/健康保険・厚生年金保険
被保険者所属選択/二以上事業所勤務届
Q:障害者特例や長期加入者特例で特別支給の老齢厚生年金を受給している人が、短時間労働者として被保険者資格を取得した場合、支給されている特別支給の老齢厚生年金はどうなるのでしょうか。
A:障害者特例について、まずおさえておきたいと思います。障害者特例や長期加入者特例(いわゆる44特例)は、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受けている方が、定額部分の支給開始年齢到達前に障害の状態になった場合や、528か月(44年)以上、厚生年金保険に加入していて、特別支給の老齢厚生年金(報酬比例部分)を受けている方が、定額部分の支給開始年齢到達前(65歳未満)に、受給者の請求によって、翌月分から報酬比例部分に加えて定額部分も受け取れるというものです。障害者特例や44特例で老齢年金が支給されている方は、定額部分が加算され、65歳から支給される本則上の老齢年金とほぼ同額の年金が支給されます。この障害者特例および44特例は別名”退職時特例”と言われていて、厚生年金に加入していないことが要件となっています。退職時特例が認められると、報酬比例部分を受けられる年齢(65歳未満)でも、事実上、本則上の”一人前の老齢年金が支給される”ことから、障害をお持ちの方や、長きに渡って会社員勤めされてきた方への功労的な意味合いから支給されるため、長期間厚生年金へ加入をされていた方にとってはありがたい年金制度です。加えて、厚生年金加入期間が20年以上あり、65歳未満の一定の配偶者がいる場合は、定額部分に合わせて加給年金が加算されます。配偶者加給年金は 388,900円(昭和18年4月2日以後生まれの場合。令和4年度年金額)です。
前置きが長くなりましたが、今回の改正では、特別支給の老齢厚生年金の定額部分を支給停止しない経過措置が設けられており、障害者特例や長期加入者特例(44特例)で老齢厚生年金を受給している65歳未満の方が、短時間労働者として厚生年金保険に加入することとなった場合であっても、「障害者・長期加入者特例に係る老齢厚生年金在職支給停止一部解除届」を提出することで、従前どおり引き続き年金の定額部分を受給することができます。
詳しい要件は被用者保険の適用拡大に伴う障害者・長期加入者特例に該当する老齢厚生年金の支給停止に関する経過措置をチェックしてみましょう。
日本年金機構HP:被用者保険の適用拡大に
伴う障害者・長期加入者特例に該当する
老齢厚生年金の支給停止に関する経過措置
短時間勤務の方にとっては、いろいろな要件からご自身がお勤め先の社会保険に入ることになるのか、それとも今までどおり扶養としていられるのか、さまざまな疑問がわいてくることと思います。「会社からパートでも社会保険に入ることになるといった説明がいまだにないので不安です。」と言われる方もおられます。「年末までに年収が130万円を超えてしまわないようにシフト調整しながら働いている。」といった声もいつになく多くあがり、家計を担う多くの女性にとっては悩ましい事態でもあります。
次回は、130万を超えて働くことのメリット、月額8.8万円で働くと将来もらえる年金額はいくら増えるのかといった具体的な数字についてみていきたと思います。
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