西宮商工会議所報 専門家Q&A 執筆~令和2年改正法による年金に関する法律の改正~
Q. 令和2年改正法によって国民年金手帳の廃止が決まったと聞きました。今後、基礎年金番号はどのように通知されるのでしょうか?また、既存の年金手帳の取扱いについてはどうなるのでしょうか?
A. 政府は令和3年6月30日、国民年金手帳の廃止と基礎年金番号通知書の作成や交付等に関する取扱いを規定した関係整備省令を公布しました。被保険者資格や保険料納付に関する情報は既にシステム管理されており、手帳という形で機能を果たす必要性がなくなりつつあるため、書類の簡素化や行政事務の効率化を図る観点から年金手帳は廃止されることとなりました。
新たに国民年金第1号~3号被保険者となった方への資格取得は、今までは国民年金手帳を交付し、通知していましたが、令和4年4月1日から年金手帳が廃止され、「基礎年金番号通知書」(通知書)に切り替わることとなりました。改正省令の経過措置として、施行日に年金手帳の交付を受けている方には基礎年金番号通知書は交付されず、既に交付された年金手帳は引き続き使用可能となります。老齢基礎年金、老齢厚生年金の裁定請求等を行う場合には、通知書を請求書等に添付しなければなりませんが、既存の年金手帳も年金手続の請求等に添付する書類として使用できる取扱いとなっています。
Q. 令和4年4月から年金に関する法律の改正がいろいろあると聞きました。年金に関してどのような改正があるのでしょうか。
A. 政府は令和2年改正年金法関連の整備政令を公布しました。これにより、令和4年4月1日から国民年金および厚生年金の「繰下げ上限年齢の引上げ」、「在職定時改定の導入」、「在職老齢年金制度の見直し」、「加給年金の見直し」などの改正年金法関連が施行されます。着目点として、繰下げ受給制度の上限年齢が現行の70歳から75歳へ引き上げられることに伴い、繰下げ待機月数が60月(5年分)から120月(10年分)となり、年金を最大84%まで増額することが可能となります。また在職老齢年金制度については、低在老(60~64歳)の支給停止基準額が「28万から47万円(3年度額)」に引き上げられて高在老(65歳)と同じとなります。このほか、65歳以降の老齢厚生年金に導入される在職時改定に関して、受給権取得後の厚生年金被保険者については、在職中であっても年金額改定を年1回行い、令和4年10月分から増額する仕組みへ改められます。加給年金の支給停止ルールについても改善されるなど、令和4年以降は改正年金法による改正項目が順次施行されます。
ダイジョウブ社会保険労務士事務所 代表 中 野 祥 子